【葵町製糸場プロジェクト】日本カメラ博物館所蔵の資料より勧工寮葵町製糸場を確認しました(2019.3.13)

今回、クラウドファンディングの告知をきっかけに、鶏卵紙による葵町工部省の写真の所在と、製糸場と考えられる写真について、大変貴重な情報を頂きました。日本カメラ博物館谷野啓様には、心より深謝申し上げます。

図面3Dデジタル復元の貴重な手がかりが見つかったことを大変嬉しく思っています。

閲覧の許可をいただき、日本カメラ博物館に赴きました。

拝見した写真アルバム「大日本全国名所一覧」は我が国最古級の写真アルバムです。明治10年(1877年)から14年(1881年)まで駐日イタリア公使を務めたバルボラーニ伯爵が母国イタリアに持ち帰ったもので、1000枚以上の全国の写真が地域ごとに掲載されています。実物を拝見し、名刺サイズの鶏卵紙3点に製糸場の外観、内観、愛宕山からの煙突像を確認いたしました。外観は煙突、軒先部の二段構造などの特徴から勧工寮葵町製糸場と同定されるものでした。鶏卵紙の写真は直接拡大してみることで、印刷物よりも詳細に細部を確認できます。図面復元に大変有力な資料です。日本カメラ博物館様より、図面資料復元に使用する際の活用許可をいただくことができました。

2月の当館シンポジウムでは、東京大学の鈴木淳先生から、富岡製糸場と流布されていた写真1点が勧工寮葵町製糸場であることを紹介いただいたところでした。鈴木先生のご指摘の写真にも今回の写真にも図面に描かれている煙突、特徴的な二段の屋根の軒先部が写されています。画像特徴の共通性で判断すると、勧工寮葵町製糸場の写真は現状4点確認されたことになります。

3Dデジタル復元のプロジェクトに取り組むに当たり、勧工寮葵町製糸場の図面だけでは、手がかりが少なく不安な面も多い状況でした。複数の画像資料があることで、考証の精度を高めることが出来、実現のイメージがより鮮明になったように思います。

東京農工大学科学博物館では、写真を図面復元の建築、機械部分の考証に使用するとともに、有識者の協力を得て歴史的調査にも活用したいと考えています。3Dデジタル復元にむけ、一つ一つ取り組んでまいります。今後もどうぞよろしくお願いいたします。

参考:大日本全国名所一覧 : イタリア公使秘蔵の明治写真帖 / マリサ・ディ・ルッソ, 石黒敬章監修 平凡社 2001.6

勧工寮葵町製糸場外観写真(タイトル:同所 工作場 大日本全国名所一覧:日本カメラ博物館蔵)